幹細胞は自己複製能と多分化能を有する細胞として定義され,3胚葉(外胚葉,中胚葉,内胚葉)への分化能を有する胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)と,胚葉を超えない多分化能を有する組織幹細胞(造血幹細胞,神経幹細胞など)に大別される。これら幹細胞から機能(組織)細胞への分化は,カスケード反応であり基本的に逆戻りしない。
しかし,特殊な条件下による組織幹細胞の胚葉を超えた分化(分化転換)や,分化した細胞の幹細胞化(脱分化)に関わる論文が数多く報告され,分化の可塑性に関わる分子機構の研究が進められていた。このような状況下,山中4因子の導入による皮膚線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)への脱分化誘導の成功を皮切りに,幹細胞化と分化転換に関わる様々な遺伝子の同定と薬剤の開発が進められ,大きな進歩が相次いで報告されている(文献1~4)。将来,細胞運命制御法を利用した,様々な難治性疾患に対する新たな治療法の創出が期待される。
1) Takahashi K, et al:Cell. 2006;126(4):663-76.
2) Wagner BK:Nat Chem Biol. 2010;6(12):877-9.
3) Sekiya S, et al:Nature. 2011;475(7356):390-3.
4) Wapinski OL, et al:Cell. 2013;155(3):621-35.