腎細胞癌に対する薬物療法は,20世紀まではサイトカインであるインターフェロン-αあるいはインターロイキン-2製剤が主流であった。しかし有効性は10数%しか期待できず,早期発見,早期手術が基本であり,現在も手術療法が主体である点に変わりはない。
2008年にスニチニブ,ソラフェニブといった2種類のチロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI),10年にはmammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬であるエベロリムスが認可され,さらにVEGFR-TKIとして10年にテムシロリムス,12年にアキシチニブが登場した。これらの薬剤により腎細胞癌,その中でも手術不可能あるいは再発症例に対しては多くの選択肢が考えられる時代となった。また,このVEGFR-TKIとmTOR阻害薬といった薬剤は交代療法も考えられ,20世紀までの薬物療法とは大きな違いが出てきている。もちろん,インターフェロンやインターロイキン製剤にも適応症例は存在する。
以上の製剤を組み合わせ,first line,second line,そして患者の状態次第ではthird line治療も考えられる。また,転移性腎細胞癌に対して投与(文献1)したおかげで手術適応になるほどの縮小効果が得られ,結果的にネオアジュバント療法になることもある。ただ,副作用についても注意が必要で,日本人の場合は欧米人より高率に手足症候群,胃腸症状が認められる(文献2)。現在,様々な投与法が試されており,腎細胞癌に対するより有効な治療法が確立されることを期待したい。
1) Abe H, et al:Int J Urol. 2013;20(10):944-55.
2) Tomita Y, et al:Jpn J Clin Oncol. 2010;40 (12): 1166-72.