あらゆる心臓疾患の最終的段階である慢性心不全に対する循環器内科および心臓血管外科両者の共通課題として,薬物治療から心臓移植まで長年にわたって議論されてきた。最近になり,β遮断薬を中心とした薬物治療の著しい進展がみられ,かつペースメーカーを用いた心臓再同期療法(CRT)が臨床導入されて,左脚ブロックなど伝導障害を認める症例を中心に,施行例の約70%で有効性が実証されてきている。しかし,米国心臓協会・米国心臓病学会(AHA/ACC)のガイドラインでは「ステージD」に分類され,薬物療法やCRTに反応しない症例群の治療としては,心臓移植や補助人工心臓に限られるのが現状である。
ドナー不足により心臓移植の件数も限られているわが国では,特に補助人工心臓の重要性が高い。補助人工心臓として従来から体外式を用いてきたが,感染,出血,塞栓症などの合併症も多く,長期入院が基本となる。一方,最近の植込型では上記の合併症が少なく,自宅での生活が可能など,患者のQOLを大きく改善させる。
そこで,2011年3月,ようやく日本製の植込型EVAHEARTR(文献1)およびDuraHeartR(文献2)の製造販売が承認された。現在,補助人工心臓治療関連学会協議会が実施施設・実施医を定め,適正使用が図られている。海外から新たなデバイス(HeartMateⅡR,Jarvik 2000R,HeartWareRなど)が認可導入され,実施件数の増加が見込まれる。しかし,植込の適応に関してはいまだ心臓移植登録症例に限られており,急性例を含め対象外となる症例も少なからず認められ,今後の検討課題と言える。
1)山崎健二:第37回人工心臓と補助循環懇話会抄録集. 2009, p70.
2)野尻知里:人工臓器. 2008;37:S-15.