腹腔鏡下根治的腎摘除術が日本国内で報告されたのは1993年である(文献1)。その後,しばらく腹腔鏡下手術は限られた施設で行われるにすぎなかった。しかし,21世紀に入り急速に広がりを見せ,日本泌尿器内視鏡学会による泌尿器腹腔鏡技術認定制度が2004年に制定された。それ以降,泌尿器科領域における手術は開腹術から腹腔鏡下手術に取って代わっている。現在では副腎,腎,腎盂・尿管,膀胱,前立腺といった尿路癌の腹腔鏡下手術はすべて保険収載されている。また小児泌尿器科領域においても腎盂形成術,腹腔内精巣における精巣固定術,気膀胱下の膀胱尿管逆流における手術と,様々な手術が行われている(文献2)。保険収載はされていないが,ロボット手術も行われはじめている。
このように腹腔鏡下手術が広がってきている現在,常に学術集会などで問題になることとして,開腹手術へ移行せざるをえなくなったときの経験不足,あるいは開腹手術の教育システムが挙げられている。しかし開腹術時代と違って,手術に入る者すべてが同じ画面で術野を共有できていることが大きなメリットとして挙げられる。腹腔鏡技術認定制度についても経験8年目以上の医師が申し込み可能であり,解剖を理解した上で手術に対応すれば,大きな問題はないと考えられる。
少しでも低侵襲な手術が求められる現在において,腹腔鏡下手術は必須と考えられる。今後もますます泌尿器科における腹腔鏡下手術は標準化され,ロボット支援下の腹腔鏡下手術も増加していくと考えられる。
1)Ono Y, et al:J Urol. 1993;150(4):1222-4.
2)Kojima Y, et al:J Urol. 2012;188(2):582-7.