全身性エリテマトーデス(SLE)の臓器病変の中で予後規定因子の1つがループス腎炎である。2012年,米国リウマチ学会(ACR)(文献1)および欧州リウマチ学会(EULAR)・欧州腎臓学会(ERA)(文献2)から相次いでループス腎炎に関するエビデンスに基づく推奨(ガイドライン)が出版された。両者とも,ループス腎炎の治療を,腎組織別に寛解導入と維持にわけて整理しており,日常臨床に適応しやすい記述である。また,免疫抑制薬の種類と使用法を中心とした記述であり,両者に本質的な違いはない。
両推奨において重要な位置づけにあるのが,ミコフェノール酸モフェチル(MMF)である。MMFは,適応拡大を目的としたグローバル試験(Aspreva Lupus Management Study: ALMS)で,寛解導入においてはシクロホスファミド大量静注療法(IVCY)に対する優位性を証明することができなかったものの,寛解維持についてはアザチオプリン(AZA)に比べて有意に再燃を抑えることが示された(文献3)。1次エンドポイントに達しなかったため,米国食品医薬品局(FDA)への承認申請は見送られている状況であるが,わが国では日本リウマチ学会が中心となって使用実態調査が進められており,近い将来,わが国でもMMFが使用可能となることが期待される。
1) Hahn BH, et al:Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64(6):797-808.
2) Bertsias GK, et al:Ann Rheum Dis. 2012;71(11): 1771-82.
3) Dooley MA, et al:N Engl J Med. 2011;365(20): 1886-95.