世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言し、世界的な懸案事項となったジカウイルス感染症(ジカ熱)。連日、最新の研究成果や流行状況が報道されているが、ここで一度、ジカ熱の基本情報を整理し確認しよう。
ジカ熱は、蚊によって媒介されるウイルス感染症。日本では今年2月に感染症法上の四類感染症に指定され、診断した医師に対し保健所への速やかな全数報告が義務づけられた。
ジカ熱は近年、東南アジア、南太平洋地域で流行が繰り返し発生してきたが、15年には中南米へ侵入し、現在の流行に至っている(図1、表1)。
ジカウイルスはデングウイルスと近縁(ともにフラビウイルス科フラビウイルス属)で、媒介蚊も同じヤブカ(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)だ。
主な臨床症状もデング熱と似ているが、デング熱と比べると軽症例が多いとされる(表2)。有効な治療薬、ワクチンがない点もデング熱と同じだ。いくつかの製薬企業はワクチン開発への意欲を示しており、日本の国立感染症研究所もクローンウイルスの作製に成功しているが、実用化には時間を要する。現段階では長袖・長ズボンの着用、ディート(忌避剤)の塗布など、蚊の刺咬防止が唯一の予防策となる。
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