医療技術の進歩により早産児の生命予後は著しく改善してきた。その主な要因は,呼吸同期式間欠的強制換気(SIMV)や高頻度振動換気(HFO)などの新しい人工換気モードの導入,加湿加温高流量経鼻酸素カニューレ(HHHFNC)などの新しいデバイスの開発,経皮動脈血酸素飽和度モニター(SpO2)やグラフィック・モニターなどを用いた連続モニタリングの定着,サーファクタント補充療法や母体ステロイド投与の普及などである。
早産児の呼吸管理において,酸素化状態を過剰に高く管理すると未熟児網膜症や慢性肺疾患が重症化する。一方,低い酸素化状態への曝露は,中枢神経障害や壊死性腸炎の発生率あるいは死亡率の上昇を懸念させる。SpO2の目標値範囲を設定して早産児の呼吸管理を行う方法を「ターゲットSpO2」と呼ぶ。
メタ解析の結果は,治療を要する未熟児網膜症の発生率が高くなるものの,死亡率が低いことから,出生から修正36週までの全期間におけるターゲットSpO2を,85~90よりも90~95に設定することを推奨している(文献1)。しかし,このメタ解析の対象となった報告におけるターゲットSpO2を85~90に設定された児は,目標から低く逸脱したSpO2に多く曝露されている。
この解析結果を臨床に応用する際には,各診療施設におけるケアのレベルを勘案する必要がある。
1) Saugstad OD, et al:Neonatology. 2014;105 (1):55-63.