No.4729 (2014年12月13日発行) P.46
稲田英一 (順天堂大学麻酔科教授)
登録日: 2014-12-13
最終更新日: 2016-10-26
過去においては,オピオイドの使用はがん性疼痛患者に限られていたが,最近は,一定の条件を満たせば,慢性疼痛患者に対してもオピオイド鎮痛薬が使用されるようになってきた。医療用麻薬のうち,コデイン,モルヒネ,フェンタニル貼付薬が,医療用麻薬以外ではトラマドール,ブプレノルフィン貼付薬が,非がん性疾患の痛みに対する適応を有している。これらのオピオイドを非がん性疼痛に使用する場合には,医師は適正使用講習e-learningの受講,処方に際しては確認書の作成,調剤を受ける患者は確認書の提示などが必要とされるなどの条件が課される場合がある。
米国においては,非がん性疼痛患者へのオピオイド投与が広く行われているが,その結果として薬物依存が起きたり,不適切な使用によって死亡したりする症例も多いと報告されている(文献1)。日本におけるオピオイド使用量は欧米に比べるとはるかに少ない。慢性疼痛患者における使用においては,その原因となる器質的病変,心理・社会的要因,依存リスクを含めた包括的な診断を行い,本剤の投与の適否を慎重に判断する必要がある。
オピオイドにより,抑うつ状態や不安感が助長されることも報告されている。痛みをとることは重要であるが,オピオイドの副作用についてもよく考慮する必要がある。オピオイドを適正に使用することは,医師にとっても,患者にとっても,きわめて重要なことである。
1) Okie S:N Engl J Med. 2010;363(21):1981-5.