現在日本では,学校健診を含め尿蛋白定性検査が健康診断に取り入れられているが,国際的には十分なコンセンサスは得られていない。
2013年,米国内科学会(ACP)は高血圧や糖尿病などのCKDリスクがない無症状の成人に尿蛋白測定によるスクリーニングを推奨しないという勧告を,ガイドラインで提示した(文献1)。これに対し米国腎臓学会(ASN)は,CKD発見のための定期検査を強く推奨するという声明文を即座に出して対抗したという経緯があり,混沌としている。
このような背景の中で,最近CKD高リスク集団と一般集団を対象に,CKDスクリーニングの費用対効果を検証したシステマティックレビューが報告された。一般集団ではCKD発症率が高い場合,進行速度が速い場合,RAA系阻害薬によって心血管イベントリスクが低下する場合などを除いて,費用対効果が認められないとしている(文献2)。これはACPの勧告を後押しする結果であり,国際的コンセンサスになる可能性がある。
しかし,わが国独自の研究では,年1回の特定健診で尿蛋白検査に血清クレアチニン測定を加えた場合,医療経済的にも二次予防の観点からも優れているとされている(文献3)。現在,慢性糸球体腎炎の早期発見による治療介入で予後の改善が期待できるようになってきており,早期発見に向けたスクリーニングが,わが国のコンセンサスとして定着することを期待したい。
1) Qaseem A, et al:Ann Intern Med. 2013;159(12): 835-47.
2) Komenda P, et al:Am J Kidney Dis. 2014;63(5): 789-97.
3) Kondo M, et al:Clin Exp Nephrol. 2012;16(2): 279-91.