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輸液管理の指標

No.4735 (2015年01月24日発行) P.52

稲田英一 (順天堂大学麻酔科教授)

登録日: 2015-01-24

最終更新日: 2016-10-26

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周術期の輸液管理は大きく変化してきている(文献1)。以前は手術侵襲の大きい手術や出血例に対して,大量の晶質液を投与することが一般的であった。たとえば,消化管手術などでは6~8mL/kg/時の輸液が推奨されてきた。しかし,大量の晶質液投与により,細胞間質の浮腫の助長や微小循環障害による組織低酸素症が発現することが明らかになっている。腸管浮腫が起こり,腸管機能が低下すると,細菌のtranslocationなどが起こりやすいことも指摘されている。
これまで輸液の指標として,出血量や尿量などの目に見える体液の出納,血圧や心拍数などのバイタルサイン,さらに中心静脈圧などの圧指標などが用いられてきた。しかし,循環血液量管理において,これらの指標は精度が低いことが明らかになってきた。心臓手術などでは経食道心エコー法(transesophageal echocardio-graphy:TEE)を用いて左室容積を計測することにより,前負荷の判定ができる。
最近,よく行われるようになってきたのは,動脈カテーテルからの圧波形から心拍出量を求め,そこから得られる1回拍出量変化量(stroke volume variation:SVV)を,輸液管理の指標とする方法である。SVVが増加した際には輸液を行い,さらにSVVの輸液に対する反応性から輸液量を判断する。ただし,輸液が必要なSVVの閾値について,10~13%程度と幅が広いことにも注意が必要である。
輸液量における完璧な指標はない。トレンドの評価,総合的な評価が必要である。

【文献】


1) Jacob M, et al:Lancet. 2007;369(9578):1984-6.

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