近年,糖尿病などの生活習慣病と認知機能低下の関連について注目されるようになった。本稿では少し視点を変えて,慢性閉塞性肺疾患(COPD)と認知機能低下について,最近の研究報告を紹介したい。
Schouらは,COPDと認知機能低下についてシステマティックレビューを報告しており,重症のCOPD症例を含むとCOPDの重症度と認知機能低下に相関があると考察している(文献1)。筆者らもレビューしたところ,認知機能低下と低酸素血症との相関の報告が多く,また注意力の障害が最も共通してみられる所見であった。
さらにSinghらは,追跡開始時点で認知機能低下のない1425名を,中央値で5.1年間前向きに観察し,COPD患者から有意に多く非健忘型の軽度認知機能障害(mild cognitive impairment:MCI)が発症したと報告している(文献2)。本研究は,COPDが認知機能低下の要因であることを強く示唆しており,非健忘型が多かったこともむしろ興味深い。
COPD患者にしばしばみられる独特の性格は,このような認知機能低下の特徴によるものかもしれない。全身疾患に合併する認知機能低下を知ることによって,日々の診療で患者に向き合うときの注意点も喚起させられる。
1) Schou L, et al:Respir Med. 2012;106(8):1071-81.
2) Singh B, et al:JAMA Neurol. 2014;71(5):581-8.