腎細胞癌は従来,放射線療法や抗癌化学療法が無効であるため,手術療法が標準的な治療法であり,根治的な腎摘除術が広く施行されてきた。近年多く発見される小径の腎細胞癌に対しては,腎機能温存の観点から腎部分切除術が推奨されるようになってきている。腎部分切除術が根治的腎摘除術と同等の根治性を有しており,かつ腎機能の面において良好である成績が既に多数発表されている(文献1)。
さらに,腹腔鏡下における腎部分切除術が開発されてきた。しかしながら腎部分切除術においては,動脈を一時的に遮断した上で腫瘍を切除し,術後の出血および尿漏防止のために切除断端の縫合閉鎖を確実に行う必要がある。2次元画像で鉗子の動きに関して制限のある腹腔鏡下手術では,腫瘍の確実な切除と断端の縫合閉鎖に関する高度な技能が要求される。その上,阻血時間が長くなると術後腎機能に悪影響が出るため,可及的短時間でこれらの操作を終了させる必要がある。
da Vinciシステムによるロボット支援腹腔鏡下手術は現在,わが国では前立腺全摘除術のみが保険で認められた術式であるが,上述したような腹腔鏡での技術的なハードルを克服すべく,米国ではロボット支援下での腎部分切除術が広く行われている(文献2)。わが国では現在,ロボット支援下腎部分切除術は自費診療のみであるが,保険収載をめざした臨床試験が予定されており,今後の普及が期待される。
1) Joniau S, et al:Nat Clin Pract Urol. 2006;3(4): 198-205.
2) Ficarra V, et al:BJU Int. 2014;113(6):936-41.