慢性腎臓病(CKD)は,末期腎不全の母体となるのみならず,心血管系合併症の危険因子でもあり,その治療法の開発は喫緊の課題である。しかしながら,現時点で,腎臓病の特異的な治療薬で認可されたものはない。
これまで,腎臓病治療薬の治験では,腎死あるいはそれに相当するクレアチニンの倍化(eGFRの57%の低下に相当)といったハードエンドポイントが用いられてきた。一方,このエンドポイントを達成するためには,多くの患者を登録して長期間フォローアップしなければならず,手間と費用の問題が大きいことから,腎臓病治療薬の開発の妨げになっていることが認識されるようになった。
最近のCoreshら(文献1)の170万人のデータをメタ解析した大規模な研究により,クレアチニンによって算出されるeGFRのより軽度の低下(30%あるいは40%の低下)によっても,正確に腎死を予測できることが示された。このため,米国食品医薬品局も欧州医薬品庁も,条件によってはeGFRの軽度の低下を腎臓病治療薬における治験のエンドポイントとして認める可能性を示唆した(文献2)(文献3)。この変化により,腎臓病治療薬の開発が全世界的に大きく加速することが期待されている。
1) Coresh J, et al:JAMA. 2014;311(24):2518-31.
2) Levy AS, et al:Am J Kidney Dis. 2014;64(6):821-35.
3) [http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2014/06/WC500169469.pdf]