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新生児慢性肺疾患に対する幹細胞治療

No.4755 (2015年06月13日発行) P.52

荻原 享 (大阪医科大学新生児科科長)

玉井 浩 (大阪医科大学小児科教授)

登録日: 2015-06-13

最終更新日: 2016-10-26

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肺は脳とともに出生時点でも臓器としての完成度が低く,それゆえ早期の傷害に対しては可逆性の余地が大きいと思われることから,再生医療への期待が高まるのは自然な流れであろう。
再生医療と言えばiPS細胞ばかりが注目を浴びているが,新生児医療の現場で最も有望視されているのは,比較的採取が容易な,臍帯血に含まれる間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells:MSCs)で,わが国でも既に,新生児低酸素性虚血性脳症に対する第1相試験が始まっている。
そして,2014年5月には韓国三星(サムスン)医療センターから,新生児慢性肺疾患(CLD)に対する第1相試験が終了したとの報告が世界に向けて発信された(文献1)。それによると,対象は在胎25週800g程度の早産児9例で,日齢10日付近にMEDIPOST社製のMSCsを気管内投与し,CLD重症度の低下を認めたとのことである。しかしながら,いくら安全とはいえハイリスク児全員に投与するわけにはいかず,この週数でも真に重症のCLDになる児はごく一部にすぎないわけで,いかにして早期に対象を絞るかが,今後の課題となるであろう。
動物実験によれば,移植細胞は臓器を問わず傷害部位にはほとんど生着せず,早期に消失することが多い。また,幹細胞を培養した際の培養液だけでも十分な効果があるというデータもあり,将来は「幹細胞を使わない再生医療」も現実味を帯びてくるのかもしれない。

【文献】


1) Chang YS, et al:J Pediatr. 2014;164(5):966-72.

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