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HIF活性化薬による貧血治療と腎臓病治療

No.4759 (2015年07月11日発行) P.50

南学正臣 (東京大学腎臓・内分泌内科教授)

登録日: 2015-07-11

最終更新日: 2018-11-27

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我々は好気的呼吸によってエネルギーを産生しており,すべての細胞が低酸素に対する防御機構を備えている。その中心となるのは転写調節因子である低酸素誘導性因子(hypoxia inducible factor:HIF)であり,通常の酸素状態ではprolyl hydroxylase domain(PHD)によって分解されるが,低酸素になるとPHDが失活して分解が抑制され,細胞に蓄積したHIFが様々な防御機構を誘導する。その代表的なターゲットはeryth-ropoietin(EPO)であり, PHD阻害薬を利用した薬理学的なHIFの活性化によって,腎不全患者においてもEPO産生を増加させて腎性貧血を治療できる可能性が示されることから,現在,複数の会社が治験を行っている。
HIFの活性化は,EPO以外にも様々な低酸素に対する防御機構を誘導するため,虚血性心疾患,脳梗塞,末梢動脈疾患などでも有効であることが期待される。慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の進行にも腎臓の低酸素状態がfinal common pathwayとして重要であることがわかっており, PHD阻害薬は腎性貧血の治療薬としてのみならず,腎臓病自体に対しても治療効果を示す可能性が高い(文献1)~(文献3)。

【文献】


1) Shoji K, et al:Curr Opin Nephrol Hypertens. 2014;23(2):161-8.
2) Mimura I, et al:Semin Nephrol. 2013;33(4):375-82.
3) Higashijima Y, et al:Expert Opin Drug Discov. 2013;8(8):965-76.

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