自殺やその対策に関連する要因は複雑であり,まだ十分に解明されているとは言えない。しかしながら,新聞,TVといったマスメディアが自殺対策に重要な役割を果たすことに関しては,多くのエビデンスが示されている。
自殺報道に関するマスメディア関係者のためのガイドラインは,WHOにより「メディア関係者のための手引き」(文献1)としてまとめられている。この手引きは日本語に翻訳され,国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の自殺予防総合対策センターのホームページからダウンロードして入手可能である。この手引きでは,報道が自殺に及ぼす影響に関して,メディア側が認識しておくべき最低限の項目が簡潔にまとめられている。さらに,これまでのこの領域における知見の簡単な文献レビューも示されている。
日本におけるこの分野の知見としては,Uedaら(文献2)が1989~2010年における著名人の自殺報道が日本の自殺率に及ぼす影響を報告している。この報告では,新聞紙面で著名人の自殺報道があった日は自殺者が4.6%増加するという結果であった。
自殺リスクのあるうつ病患者などは,精神科だけでなく内科なども受診する可能性があり,報道の患者への影響に関して,念頭に置いておく必要があるであろう。
1) WHO:自殺予防 メディア関係者のための手引き 2008年改訂版日本語版. 河西千秋, 訳. 2009.
[http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~psychiat/WEB_YSPRC/pdf/media2008.pdf]
2) Ueda M, et al:Int J Epidemiol. 2014;43(2):623-9.