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デルマドロームと自己免疫

No.4762 (2015年08月01日発行) P.62

室 慶直 (名古屋大学皮膚科准教授)

秋山真志 (名古屋大学皮膚科教授)

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-10-26

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「皮膚は内臓の鏡(鑑)」と言われる。それを表す皮膚科用語にデルマドローム(dermadrome)がある。米国のKurt Wienerが1947年に初めて記載したdermatologyとsyndromeからなる造語である。彼は,皮膚以外の病変の特徴的病態を直接反映した皮膚病変(たとえば胃癌の皮膚転移)をspecific dermadromeとし,内臓疾患により生じる皮膚の反応性病変(たとえば肝疾患による瘙痒)をnon-specific dermadromeとしたが,その定義の範囲があいまいなこともあり,欧米ではこの用語は使用されない。しかし,わが国では,皮膚病変から“意外な”内臓疾患が発見される意味で重視される(文献1)。
内臓悪性腫瘍の場合,転移性皮膚癌のような直接デルマドロームに対して,腫瘍と直接の因果関係を認めない間接デルマドロームとしての皮膚疾患が多数ある。黒色表皮腫,Sweet病,Leser-Trelat徴候などが属するが,ほかに自己免疫が関与し,自己抗体のターゲットが診断に有用な疾患として,皮膚筋炎と腫瘍随伴性天疱瘡がある。
皮膚筋炎は近年,自己抗体の種類による病型分類がかなり明確になってきたが,TIF1γやNXP2といった核内蛋白に対する抗体が成人例で存在する場合は,悪性腫瘍の合併頻度が高い(文献2)。腫瘍随伴性天疱瘡では,細胞結合の接着装置であるプラキンファミリーのうち,エンボプラキンとペリプラキンに対する抗体が有力な診断根拠になる(文献3)。これらの産生機序の解明がデルマドローム発症機序の解明にヒントを与えてくれるものと期待される。

【文献】


1) 三橋善比古:日皮会誌. 2014;124(5):917-20.
2) 室 慶直:炎症と免疫. 2014;22(3):195-201.
3) 石井文人:日皮会誌. 2014;124(8):1539-43.

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