株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ANCA関連血管炎性中耳炎 【進行性の難聴をきたすことが多く,耳鼻咽喉科・膠原病科の密接な連携が必要】

No.4778 (2015年11月21日発行) P.47

田村誠朗 (兵庫医科大学内科学 リウマチ・膠原病科)

佐野 統 (兵庫医科大学内科学 リウマチ・膠原病科主任教授)

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

近年,難治性中耳炎の原因疾患として,全身の血管炎を引き起こすANCA(anti neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎に伴う部分症状であるANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA-associated vasculitis:OMAAV)の疾患概念が提唱されている。
同疾患は初期症状としては難聴が多いが,典型的な所見に乏しい。診断には生検による組織診,ANCAが重要であるが,病理組織所見からの診断確定率は低く,ANCAが陰性である症例報告も多いため,早期診断に苦慮することが多い。また,進行すると顔面神経麻痺や肥厚性硬膜炎を併発することもあるため,脳神経症状の出現には注意が必要である。難聴出現から比較的早期に治療介入しえた症例では聴力が改善している報告(文献1)が多く,早期診断の必要性が課題として挙げられる。多くの報告では聾まで進行した症例は聴力回復が望めないとされているが,聾まで進行した難聴が改善した報告(文献2)もある。
治療としては,進行性の難聴をきたす例が多いこと,また経過中に全身型に移行することも少なくないことから,ステロイドと免疫抑制薬の併用療法が勧められている。
初期症状に難聴が多いことから,耳鼻咽喉科を初診する患者も少なくない。一般耳鼻咽喉科に対する啓蒙,耳鼻咽喉科と膠原病科との密接な連携が必要である。

【文献】


1) Yoshida N, et al:Allergol Int. 2014;63(4):523-32.
2) 内田真哉, 他:Otol Jpn. 2013;23(2):92-7.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top