No.4780 (2015年12月05日発行) P.56
近藤一郎 (東京慈恵会医科大学麻酔科准教授)
登録日: 2015-12-05
最終更新日: 2016-10-26
近年,レミフェンタニルやデスフルランの導入により術後の覚醒の質が良くなっており,術後鎮痛に対して十分な考慮が必要になってきている。さらに,術後には抗凝固療法を早期に再開するために硬膜外カテーテルの留置が困難なこと,または硬膜外鎮痛からエコー下末梢神経ブロックへの移行は,術後鎮痛の管理自体をも変化させているようである。一方,包括医療が実施されているため,病院の取り組みとしては合併症をつくらず,早期離床・早期退院を促している。そのためにも術後疼痛には病院全体で取り組み,早期回復に貢献する必要がある。わが国では欧米にかなり遅れることにはなったが,APS(acute pain service)やPOPS(postoperative pain service)という術後疼痛管理体制を組織的に進めてきている。
米国麻酔科学会の急性疼痛管理における診療指針は2004年より作成が開始され,常にアップデートされている(文献1)。特徴的なのはエビデンスに基づいた多角的な鎮痛管理(multimodal analgesia)を取り入れる指針が記されていることである。たとえば,神経ブロック,オピオイド自己調節鎮痛法,アセトアミノフェンやNSAIDsの定時投与を組み合わせて総合的に鎮痛を図る,などである。しかし,オピオイドを多用する米国と,日本との鎮痛薬に対する考え方の違いや,人種によるオピオイド感受性の違い,さらには施設の違いもあるため,日本の患者や日本の施設において,より合ったものを用いていくべきであろう。
1) American Society of Anesthesiologists Task Force on Acute Pain Management:Anesthesiol-ogy. 2012;116(2):248-73.