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冠動脈バイパス術:両側内胸動脈グラフトの新たなエビデンス 【胸郭の血流不全による術後感染症はskeletonizationでリスク回避が可能】

No.4782 (2015年12月19日発行) P.53

梶本 完 (順天堂大学心臓血管外科准教授)

天野 篤 (順天堂大学心臓血管外科教授)

登録日: 2015-12-19

最終更新日: 2016-10-26

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冠動脈疾患に対するバイパス術(CABG)において,動脈グラフトは静脈グラフトと比較して長期の開存率に優れる。特に内胸動脈は動脈硬化の少ない良質な血管であり,左前下行枝への血行再建は多くのエビデンスで支持されている。
従来のCABGは,この左内胸動脈と1~2本の静脈グラフトの組み合わせがグラフトデザインとして一般的であった。一方で,左内胸動脈に右内胸動脈も加えた,両側内胸動脈というグラフトデザインは,採取に時間を要することと,胸郭の潜在的な血流不全のリスクから,使用頻度が低かった。
糖尿病はCABG術後長期成績のリスクファクターであり,糖尿病の不利益を解消することが外科医の課題である。筆者らのメタ解析(文献1)は,両側内胸動脈グラフトが1本の内胸動脈と比較して糖尿病患者の予後を改善することを示し,危惧されていた胸郭の血流不全による術後感染症も,余剰組織をつけずに内胸動脈を採取するskeletonizationによりリスク回避できることが明らかになった。
こうしたグラフトの使用戦略の近代化はCABG後の長期予後を改善し,CABGの進歩の一翼を担っている。

【文献】


1) Kajimoto K, et al:Ann Thorac Surg. 2015;99(3):1097-104.

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