前立腺癌に対するIr(イリジウム)-192を線源とした高線量率組織内照射療法(high dose-rate brachytherapy:HDRBT)は,治療時のPSA値,グリソンスコアに関係なく,リンパ節転移や遠隔転移のない症例であれば適応となる(文献1)。また,重度の心疾患,脳血管障害,腹部手術既往,高齢などで手術ができない場合にも治療可能である。前立腺肥大症を合併している場合は,アプリケーター針の挿入が困難な場合があるので,前立腺の縮小を図る目的でネオアジュバントホルモン療法を3~6カ月行い,前立腺体積が30mL以下となったところで治療を開始する。治療後のアジュバントホルモン療法の有用性については一定の見解が得られておらず,いまだ議論の余地がある。
HDRBTは手術療法に比べて治療後の尿失禁,性機能障害が少ない特徴があり,患者のQOLを落とさない治療であると言える(文献2)。また,治療成績に関して,low risk群では手術療法や低線量率組織内照射療法と同等であるが,high risk群では特に良好な成績を示しており,5年PSA非再発率において59~95%の報告がある。high risk限局性前立腺癌に対する根治療法として有用な治療法であると考えられる(文献3)。HDRBTは通常,外照射療法と併用して行う。しかし,放射線治療後,重粒子線治療後,HIFU(高密度焦点式超音波治療法)後の局所再発症例に対しては,救済療法としてHDRBTを単独で行うことも可能である(文献3)。
1) Jo Y, et al:Urology. 2004;64(3):556-60.
2) Jo Y, et al:BJU Int. 2005;96(1):43-7.
3) Jo Y, et al:BJU Int. 2012;109(6):835-9.