透析アミロイドーシスは長期透析を実施した患者に発症する合併症で,全身性アミロイドーシスのひとつである。透析患者では腎臓から排泄されるべきβ2ミクログロブリン(β2MG)の血中濃度が正常の10~40倍に上昇する。透析アミロイドーシスはβ2MGが前駆蛋白となり,主に骨関節周囲に沈着することで発症する。透析歴20年の長期透析患者では透析アミロイドーシスによる手根管症候群が約50%に認められるとされていた。
日本透析医学会では1999~2000年,2010~11年にそれぞれ,新規に手根管症候群手術を実施した患者数の調査を行った(文献1)。その結果,透析歴20年での新規手根管症候群手術を実施した患者は,1999年の16.5%が2010年には7.8%に減少した。1999年と2010年の全体の比較からも,この10年間で透析アミロイドーシスの発症を約5年間遅延させたことが明らかとなった(文献1)。
血中のβ2MG濃度と透析アミロイドーシス発症との関連は明らかでないが,β2MGの除去率を80%以上に上げた患者では,新規に手根管症候群手術を実施することが少なくなっていることもわかっている(文献2)。これはβ2MGの除去可能な透析器の開発,大量の置換液を使用した血液濾過透析の普及,透析液の清浄化など,透析技術の進歩により,長期透析アミロイドーシスの発症を遅延させることに成功した貴重な調査結果と考えられる。
1) Hoshino J, et al:Nephrol Dial Transplant. 2015 Jul 22. [Epub ahead of print]
2) Hoshino J, et al:Am J Nephrol. 2014;39(5):449-58.