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新生児低酸素性虚血性脳症に対する脳低温療法 【予後良好群が50%程度であることから,治療の改良や併用療法の効果に期待】

No.4783 (2015年12月26日発行) P.51

井上真改 (福岡大学小児科)

廣瀬伸一 (福岡大学小児科主任教授)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-26

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新生児脳低温療法(BHT)は,低酸素性虚血性脳症(HIE)による恒久的な脳障害を予防あるいは軽減する目的で始められた治療法である。
適応基準は,在胎36週以上,体重1800g以上で,①生後10分のアプガースコアが5点以下,②10分以上の持続的な蘇生が必要,③生後60分以内の血液ガスでpH 7未満,④生後60分以内の血液ガスでbase deficitが16mmol/L以上,の条件のうち1つを満たす場合である。さらに,中等症から重症のHIE症状を呈し,少なくとも30分間のam-plitude-integrated EEG(aEEG)波形で中等度以上の異常もしくは痙攣を認めるものとされている(文献1)。
冷却方法は選択的頭部冷却法と全身冷却法がある。生後6時間以内に治療を開始し,目標深部温度34℃まで冷却する。指標は,食道温や直腸温を用いる。BHT施行中は,各種モニタリングを行い,体温管理と同時に呼吸循環,血液凝固,電解質,感染,痙攣などに注意する。冷却時間は72時間で,終了後0.5℃/時で37℃まで復温する。
BHTは比較対照試験(文献2,3)によりHIEに対する有効性が報告されたが,予後良好群は依然50%程度で,さらなる予後改善の検討は重要である(文献4)。そのため併用療法としてメラトニン,Xeガス吸入,エリスロポエチンなどの効果が検討されている。

【文献】


1) Perlman JM, et al:Circulation. 2010;122(16 Suppl 2):S516-38.
2) Shankaran S, et al:N Engl J Med. 2005;353(15):1574-84.
3) Wyatt JS, et al:Pediatrics. 2007;119(5):912-21.
4) Jacobs SE, et al:Cochrane Database Syst Rev. 2013;1:CD003311.

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