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わが国の慢性腎臓病の原因疾患と末期慢性腎不全患者数

No.4791 (2016年02月20日発行) P.50

山縣邦弘 (筑波大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-02-20

最終更新日: 2016-10-26

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慢性腎臓病(CKD)では腎機能の悪化をまねいた原因の詳細はいまだ大半が不明である。CKDのうちで最も多い,尿蛋白が陰性でeGFRが45~60
mL/分/1.73m2の患者における原因疾患が最たるもので,糖尿病性腎症などではなく糖尿病を併発している患者もいるが,加齢,動脈硬化,高血圧などの生活習慣病関連疾患に長期間罹患した結果,腎機能の軽度低下をまねいたものが多いと想定される。CKDステージG5の患者となると,その患者数すら詳細は不明である。年間の新規透析導入患者数などから逆算すると,わが国のCKDステージG5患者は約6万7000人と推定された(文献1)。しかし,これも何らかの理由で透析非導入となった患者などは考慮されていない。
一方,腎代替療法を受ける末期慢性腎不全患者数は,維持透析患者数と腎移植後機能腎を持った患者数の和である。腎移植患者の詳細なフォローアップ調査がされた2007年末には機能腎を持った腎移植術後患者は1万13人だったが,08年末には1万1157人と1年間で1000人以上増加した(文献1)。さらに,最近の生体腎移植では1年生存率98.8%,5年生存率96.2%,献腎移植ではそれぞれ97.5%,91.2%ときわめて良好な腎移植の成績が残されている(文献2)。先の数値およびこれらの結果を考慮すると,13年末には機能腎を持った腎移植患者は約1万6900人存在することが推測される。以上から,わが国の末期慢性腎不全患者数は透析を受けている31万人+1.7万人が正しいことになる。

【文献】


1) Yamagata K, et al:Clin Exp Nephrol. 2015;19(1):54-64.
2) 日本移植学会, 他:移植. 2014;49(2・3):240-60.

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