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ファロー四徴症根治術における肺動脈弁治療 【根治術の成績の向上で再建肺動脈弁の長期的機能が課題に】

No.4795 (2016年03月19日発行) P.53

中西啓介 (順天堂大学心臓血管外科)

天野 篤 (順天堂大学心臓血管外科教授)

登録日: 2016-03-19

最終更新日: 2016-10-26

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ファロー四徴症とは,1888年にフランス人医師であるEtienne Louis Arthur Fallotが報告した疾患である。チアノーゼ性心疾患としては最も発生率が高い,代表的なものである。ファロー四徴症根治術の治療成績は2012年の日本胸部外科学会のannual reportによると,病院死亡率は436人中5人(1.1%)であった(文献1)。現在,ファロー四徴症根治術の成績が上がるにつれて,再建肺動脈弁の長期的機能が問題になってきている。
肺動脈再建方法は,通常縦切開した主肺動脈から肺動脈弁交連切開を行い,得られた肺動脈弁輪径が正常の80%以上ならば温存することが可能である。肺動脈弁輪径が不足する場合,肺動脈弁輪まで切開を延長しPTFE(polytetrafluoroethylene)などで作成した1弁付きパッチを用いて再建を行うが,長期的な肺動脈弁機能については自己弁を温存できた場合よりも劣る。
現在,根治術時に自己弁をなるべく温存するための平松法(文献2)など様々な工夫がなされている。さらに,自己弁が温存できない場合でもバルサルバ洞付きパッチ(文献3)の使用など,創意工夫がなされて良好な成績を示している。これまで救命に主眼が置かれていた本疾患に対して,遠隔期QOLの改善をめざした各種治療の長期遠隔期成績が待たれるところである。

【文献】


1) Masuda M, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2014;62(12):734-64.
2) Hiramatsu Y:Ann Thorac Surg. 2014;98(5):1850-2.
3) Yamagishi M, et al:J Cardiovasc Surg (Torino). 2002;43(6):779-86.

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