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神経血管減圧術の工夫 【治療成績を向上させたtransposition法への手技転換から,さらなる低侵襲化へ向けた歩み】

No.4799 (2016年04月16日発行) P.50

五島久陽 (山口大学脳神経外科)

鈴木倫保 (山口大学脳神経外科教授)

登録日: 2016-04-16

最終更新日: 2016-10-26

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その山頂(いただき)は姿が見えるが高く遠い。1960年代にJannettaらが報告した神経血管減圧術は,多くの三叉神経痛,片側顔面痙攣あるいは舌咽神経痛患者に笑顔をもたらした。その目的はシンプルで,原因となる神経と接触・圧迫する血管を離し症候を取ることにあり,現在も変わりはない。山麓からの歩みは2つの大きな山岳を越え,山頂全貌を眼前にとらえた。血管と神経の間にものを挾む「interposition」法から,責任血管を移動させる「transposition」法への転換により再発率を低下させたことから治療成績は向上し,また神経モニタリングを行うことで手術合併症である聴力障害発生を1%以下に低下させた(文献1)。
脳神経外科手術の醍醐味のひとつである「鍵穴手術」が好んで用いられる本手術は,その後も目前にせまった山頂への歩みを日々寄せ,より簡便・確実に「手技の創意工夫」,より安全に「合併症削減」をめざした報告が多数なされている。血管移動には,自家硬膜,Gore-Tex,Teflonなど様々なものが工夫を持って使用されるが,優劣つけがたい。また,合併症削減のための低侵襲化は,完全内視鏡下手技の確立や頭皮の小神経温存にまで進んでいる。
近くて遠い山頂へ,今も脳神経外科医の「歩み」「想い」は続いている。

【文献】


1) Barker FG 2nd, et al:N Engl J Med. 1996;334(17):1077-83.

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