人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)によると,2014年の白血病死亡者のうち,65歳以上が約78%を占める。高齢者白血病の中で最多は急性骨髄性白血病(AML)である。急性前骨髄球性白血病を除いて,若年者AMLの標準治療は寛解導入療法(ダウノルビシンまたはイダルビシン+シタラビン),地固め療法,予後不良例に対する寛解期同種造血幹細胞移植であるが,これが高齢者には必ずしも標準ではない。この10年間で高齢者対象第3相試験の報告は全世界で10報に満たず,長期生存率は10~25%にとどまる(文献1)。
実地ではまず治療適応の評価を行う。染色体・遺伝子に加え,年齢,全身状態,併存症,認知機能,身体機能などを用いるが,この評価法自体も標準化されていない。多剤併用化学療法の適応(fit)または非適応(unfit)にわけるのが一般的であるが,fitでも薬剤減量が一般的で,同種造血幹細胞移植はまだ実験的なため,再発が多い。unfitの場合は低用量化学療法または支持療法(輸血など)を行う方針となる。
新規薬剤の開発が待たれるが,カリケアミシン結合抗CD33モノクローナル抗体は再発・難治例の単剤使用に限られ,DNA脱メチル化薬は保険適用外である。最近の報告でFLT3阻害薬,細胞周期を阻害する諸薬剤の効果が期待されるが(文献1),現時点で既存の治療を凌駕するものはなく,今後の発展が待たれる。
1) 伊藤良和:臨血. 2015;56(10):1960-8.