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常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)にはバソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンを  【トルバプタンはADPKDの腎機能低下や腎容積増加を有意に抑制する】

No.4805 (2016年05月28日発行) P.52

岡田浩一 (埼玉医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-05-28

最終更新日: 2016-10-26

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常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)ではcAMPにより囊胞上皮細胞の増殖が誘導され,その一部は集合管上皮細胞のバソプレシンV2受容体刺激を介したcAMP産生によるものとされてきた。当然,臨床導入されたバソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン(TVP)には,腎囊胞の増大抑制が期待された。
2012年に報告された大規模RCTであるTEMPO 3:4試験では,期待通りにTVP3年間の服薬によりADPKDの腎機能低下や腎容積増加が有意に抑制された(文献1)。この試験の対象患者は世界15カ国の1445人に上るが,うち177人は日本人であり,そのサブ解析も行われた(文献2)。その結果では,日本人のADPKD患者においてもTVPは腎機能低下や腎容積増加を有意に抑制した。
現在,『エビデンスに基づく多発性囊胞腎(PKD)診療ガイドライン2014』において,TVPはグレードBで治療薬に推奨されている。また,米国ではまだ適応承認を受けていないが,16年には欧州の「ERBPガイドライン」においても推奨された(文献3)。TVPはほかに有効な治療薬のないADPKDに対する初めての治療薬であり,その長期の有用性に期待がつのる。

【文献】


1) Torres VE, et al:N Engl J Med. 2012;367(25):2407-18.
2) Muto S, et al:Clin Exp Nephrol. 2015;19(5):867-77.
3) Gansevoort RT, et al:Nephrol Dial Transplant. 2016;31(3):337-48.

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