末期腎不全患者に対する腎代替療法は透析が一般的であるが,透析を経ずに腎移植を行うことができることは広く知られていない。先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:PEKT)と呼ばれ,透析を経てから行う腎移植よりも移植腎の生着率や生存率が良好であると言われており,シャント作製や腹膜透析カテーテルの挿入などといった,患者の身体的な負担をなくすことができる(文献1)。
わが国の現状を見ると,欧米と異なり献腎待機日数が約14年と長いため,献腎移植でのPEKTはほぼ不可能である。そのため,PEKTは生体腎移植に限られてしまう。国内での腎移植の約10~20%はPEKTであり,欧米の半数以下である。また,透析導入を含めて腎代替療法としてPEKTを選択する割合は,末期腎不全患者の1%未満にとどまっている。
PEKT患者は長期透析患者に比較して動脈の石灰化が少なく,膀胱の廃用性萎縮もないなど,腎移植手術における利点が多い。そのため,末期腎不全患者には,腎臓内科医から早い段階で腎移植を提示することと,移植施設に紹介することが肝要である。また,腎移植手術時に尿毒症症状と体液過剰がみられる場合は,術前のpreconditioningとして数回,血液透析を行う。
1) Meier-Kriesche HU, et al:Kidney Int. 2000;58(3):1311-7.