【Q】
看護助手(ナース・エイド)の適法性について。当院では,看護助手(無資格者)が精神科病床などで患者の療養上の世話や,外来において平易な診療の補助(介護など)などを行っております。なお,看護助手は看護師と同じ服装をしています。これらは何らかの法令に違反するのでしょうか。 (岐阜県 K)
【A】
この質問は,3つの質問が混ざっているため,ひとつずつわけて回答します。
まず,看護補助者(看護助手)が療養上の世話を行うことが可能かという点について回答します。
「療養上の世話」とは,保健師助産師看護師法第5条では,「『看護師』とは,厚生労働大臣の免許を受けて,傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」とされており,看護師しかできないようにも思えます。
この点,厚生労働省の通達は,看護師の業務について,「(1)病状の観察,(2)病状の報告,(3)身体の清拭,食事,排泄等の世話等療養上の世話,(4)診察の介補,(5)与薬・注射・包帯交換等の治療の介助及び処置,(6)検温,血圧測定,検査検体の採取・測定,検査の介助,(7)患者,家族に対する療養上の指導等患者の病状に直接影響のある看護は,看護師又は看護師の指示を受けた准看護師が行うものである」とし,一方で看護補助者については,「看護補助者は,看護師長及び看護職員の指導の下に,原則として療養生活上の世話(食事,清潔,排泄,入浴,移動等)のほか,病室内の環境整備,ベッドメーキング,看護用品及び消耗品の整理整頓等の業務を行うこととする」としています。
この通達からすると,看護補助者は,食事,清潔,排泄,入浴,移動等の世話を行うことは可能です。ただし,「患者,家族に対する療養上の指導等患者の病状に直接影響のある」場合には,看護師が行う必要があることになります。たとえば,離床できない患者のベッドメーキングは,病状に直接影響がある可能性があるため,行うことはできません。
次に,診療の補助が可能かという点についてですが,いわゆる「診療の補助」はできません。しかし,この質問は,「平易な」とありますから,診療に「直接および間接に関係する」補助が可能かという形で返答します。
診療の補助とは,直接的には,身体的侵襲の比較的軽微な医療行為の一部について補助することを意味するもので,前記通達から引用すれば,「病状の観察と報告,診察の介補,与薬・注射・包帯交換等の治療の介助及び処置,検温,血圧測定,検査検体の採取・測定,検査の介助」などがこれに当たることになります。このような行為は医師や看護師しか行うことはできません。しかし,診療を行う上での間接的な補助であれば話は別です。患者の呼び出しをする,移動を手伝って診察室に誘導する,体温計を渡す,血圧測定に案内する,問診票を渡すなどは,医療行為自体の補助ではないため,行うことは可能です(介護の現場等に診療現場が含まれるか明確ではありませんが,「平成17年7月26日付医政発第0726005号厚生労働省医政局長通知」が参考になります)。
最後に,看護助手が看護師と同じ服装で業務を行うことは可能かという点ですが,服装についての法の定めはなく(セクハラになるようなものは別ですが),病院で取り決めればよいかと考えます。ただし,服装で区別がつかなければ,患者から看護師しか行うことができない業務を頼まれるなど,区別がつかないことによるリスクがありますので,その点はご留意下さい。