株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

上部尿路上皮癌の周術期化学療法の選択 【正確なhigh-risk症例予測の診断法,予測因子の検討が課題】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.58

松山豪泰 (山口大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野 教授)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

上部尿路上皮癌に対しては腎尿管全摘術および膀胱部分切除術が標準治療となっていますが,術前あるいは術後に行う化学療法の選択については,病期や腎機能の観点から悩むことが多いと思います。上部尿路上皮癌の周術期化学療法の適切な選択について,山口大学・松山豪泰先生のご教示をお願いします。
【質問者】
藤本清秀:奈良県立医科大学泌尿器科教授

【A】

上部尿路上皮癌(upper tract urothelial carcinoma:UTUC)は全尿路上皮癌のわずか5%と症例数が少ないため,周術期(術前,術後)補助化学療法の有用性に関する明確なエビデンスがありません。最近のメタアナリシスでは術前,術後療法ともシスプラチン(cisplatin:CDDP)ベースの抗癌化学療法による生命予後改善効果が報告されていますが,ランダム化比較試験結果ではありません。
術前あるいは術後化学療法の選択については,それぞれメリット,デメリットがあります。術後化学療法は真に抗癌化学療法が必要なhigh-risk症例のみを選択施行できることが最大のメリットですが,一方で患側腎摘除による腎機能低下はその後のCDDPをべースとした化学療法の施行を制限する結果となります。一般に,UTUC症例は腎機能低下例が多く,CDDP標準投与量の基準であるeGFR 60mL/分/1.73/m2以上の症例割合は術前48%に対し,術後22%に減少します(文献1)。
また,術前化学療法は,腎機能が比較的良好な状態で可能であること,治療によりダウンステージングや病理組織学的完全奏効(pathological complete response:pCR)が予後予測因子となることなどのメリットがありますが,high-risk症例以外の症例に対する過剰治療の可能性や手術までの期間が延長するというデメリットもあります。術前化学療法のデメリットである手術までの期間延長により,手術の至適タイミングを逃す可能性があります。high-risk症例をどのように予測するかについては確立された方法はないものの,尿管鏡検査による腫瘍の形状観察や腫瘍生検によるgrade評価が有用であったとの報告もあります。
結論として局所浸潤例(T3以上),リンパ節腫大,high grade例などのhigh-riskが疑われる症例に対しては術前補助化学療法が予後改善につながる可能性があり,正確なhigh-risk症例予測のための診断法,予測因子の検討が今後の課題でしょう。

【文献】


1) Lane BR, et al:Cancer. 2010;116(12):2967-73.

関連記事・論文

関連書籍

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top