冠動脈ステントの歴史は従来型の金属ステント(BMS)に始まり,2004年にはわが国でも薬剤溶出性ステント(DES)の使用が可能となった。第1世代DESはBMSと比較し再狭窄のリスク低下をもたらしたが,ポリマーに起因する慢性期の遅発性血栓症などが問題となった。
第1世代の問題点を解決すべく,生体適合性の高いポリマーを使用した第2世代DESが,10年からわが国でも使用可能となった。エベロリムス溶出性ステント(XienceⓇ)は第1世代DESやBMSと比較し,血栓症のリスクが有意に低いことが報告され1),現在広く使用されている。
さらに15年以降,ストラットが薄く,生体吸収性ポリマーを使用した第3世代DESが登場した(UltimasterTM,SynergyTM)。UltimasterTMとXienceⓇを比較した臨床試験では,2年で同等の成績が報告されている2)。生体吸収性ポリマーと生体適合性ポリマーとの比較では,現在のところ臨床成績に明らかな差を認めていないが3),長期的な生体吸収性ポリマーの利点が期待されている。
また,新たなデバイスとして,生体吸収性スキャフォールド(BVS)が承認予定である。国内治験では,1年でXienceⓇと同等の成績が報告されている。2~3年で加水分解により完全にスキャフォールドが消失するため,より長期にわたる臨床成績の改善が期待される。
【文献】
1) Palmerini T, et al:Lancet. 2012;379(9824): 1393-402.
2) Saito S, et al:Eur Heart J. 2014;35(30):2021-31.
3) Natsuaki M, et al:JAMA. 2014;311(20):2125-7.
【解説】
夏秋政浩 福岡県済生会福岡総合病院心臓血管・大動脈センター循環器内科部長