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直腸癌手術におけるICG蛍光ナビゲーションの有用性 【術後縫合不全減少への寄与に期待】

No.4829 (2016年11月12日発行) P.50

河田健二 (京都大学医学部附属病院消化管外科講師)

登録日: 2016-11-09

最終更新日: 2016-11-08

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直腸癌術後の縫合不全は最も厄介な合併症のひとつで,その発生には様々な因子が関与するが,中でも腸管血流は最も重要と考えられている。腸管血流を把握するには,腸管の色調,辺縁血管の視認・触知,辺縁血管断端からの動脈性出血の確認などが一般に行われるが,いずれも外科医の主観的判断に基づくものである。客観的な血流評価法として,近年ではICG蛍光法を用いた近赤外線システムがその簡便さ,正確さの観点から注目を集めている。体内に投与されたICGは血漿蛋白と結合し,760nmの赤外光で励起すると830nmの蛍光を発する。この特性を用いて血管バイパス術におけるグラフト評価,センチネルリンパ節同定などの外科領域では次々に臨床応用されている。

大腸癌領域においては,多施設前向き研究(PIL LAR-Ⅱ試験)にて腹腔鏡下左側結腸切除・直腸前方切除術にICG蛍光ナビゲーションによる腸管血流評価を導入したところ,8%の症例で腸管切離部位の変更が必要となり,縫合不全は1.4%であった1)。当科でのS状結腸~直腸癌68例の検討では,心血管疾患の既往にて抗凝固療法を術前まで継続していたり,術前化学療法を受けたというような,いわゆるハイリスク症例においてICG蛍光ナビゲーションによる腸管血流評価は特に有用性が高いことが明らかとなった2)。ただ,評価法の正確さなどの問題点も指摘されており,今後のさらなる検討が期待される。

【文献】

1) Jafari MD, et al:J Am Coll Surg. 2015;220(1): 82-92.

2) Kawada K, et al:Surg Endosc. 2016 Jun 28. [Epub ahead of print]

【解説】

河田健二 京都大学医学部附属病院消化管外科講師

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