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(2)ギラン・バレー症候群の発症機序 ─病理・自己抗体・分子相同性・動物モデルなど [特集:ギラン・バレー症候群 ─今わかっていること]

No.4834 (2016年12月17日発行) P.35

西本幸弘 (国立病院機構和歌山病院小児科医長)

登録日: 2016-12-16

最終更新日: 2016-12-08

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  • ギラン・バレー症候群(GBS)は脱髄型と軸索型に分類される

    GBSの標的自己抗原はGM1やGD1aガングリオシドで,これらに対するIgG抗GM1抗体や抗GD1a抗体は軸索型GBSに関連している

    GBS患者から分離されたCampylobacter jejuniとヒトのガングリオシドの間には分子相同性が存在する

    ヒトの軸索型GBS発症において抗ガングリオシド抗体と補体が重要な役割を担っている。軸索型GBSの動物モデルは,その根拠を与えている

    菌外膜にGM1様リポオリゴ糖(LOS)またはGD1a様LOSを表出したC. jejuniに先行感染した患者の血清中にはIgG抗GM1抗体または抗GD1a抗体が上昇する。これらの抗ガングリオシド抗体が四肢運動神経のGM1またはGD1aガングリオシド分子を表面抗原として認識結合し,補体を活性化する。これにより軸索膜が傷害されて,電位依存性ナトリウムチャネルの集簇が消失する。そして,神経活動電位の伝導障害が起こり,筋力低下が出現する

    1. ギラン・バレー症候群(GBS)の病理像

    病理組織所見から,ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は脱髄型と軸索型の2つの亜型に分類される1)2)。脱髄型GBSである急性炎症性脱髄性ポリニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy:AIDP)は,T細胞やマクロファージの炎症性細胞浸潤と節性脱髄,そして,大小運動感覚神経の神経根に二次性軸索変性を伴う古典的な病理学所見を特徴とする1)。Schwann細胞外側に抗体が結合して補体を活性化させる3)。そして,髄鞘に小胞を形成して髄鞘に傷害を起こす。その後,1週以内にマクロファージの浸潤が観察される。
    一方,軸索型GBSである急性運動性軸索型ニューロパチー(acute motor axonal neuropathy:AMAN)では,Ranvier絞輪部の運動神経軸索膜にIgGが結合し,補体を活性化することで膜侵襲性複合体を形成する4)。その結果,リンパ球の浸潤や脱髄を伴わない運動神経の軸索変性が起こり,Ranvier絞輪部が開大する2)5)
    臨床的にミラー・フィッシャー症候群(Miller Fisher syndrome:MFS)を伴ったGBSの剖検例において,神経組織化学的検討や電子顕微鏡所見からは,脱髄型と軸索型GBSとに明確な区別をつけることができなかった3)4)。純粋型MFS患者のほとんどは予後良好であり,完全に回復する。死亡することが稀であるため,MFSの病理像については明らかにされていない。

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