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「受動喫煙防止─医療界はどう向き合うべきか」[長尾和宏の町医者で行こう!!(68)]

No.4834 (2016年12月17日発行) P.20

長尾和宏 (長尾クリニック)

登録日: 2016-12-12

最終更新日: 2016-12-09

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  • 「世界最低レベル」を知る

    2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、厚生労働省は10月に受動喫煙防止対策法案を公表した。法案では医療機関について、建物内だけでなく敷地内を含めた全面禁煙が謳われている。しかし、外傷で救急搬送される禁煙意識が低い患者や、予後の短いがん患者が多く入院する病院の関係者からは喫煙室設置を可とする柔軟な対応を求める声が上がっている。飲食業界も「全面禁煙による顧客離れ」を懸念しているが、国民が受動喫煙を経験した場所で最も多いのはその飲食店である。

    一方、WHOは受動喫煙防止への日本の対応について、2014年の時点で「世界最低レベル」と酷評している。2003年に施行された健康増進法は、学校や病院などに対して受動喫煙防止策を講じるよう求めているが、努力義務にとどまり違反者への罰則規定はない。受動喫煙を許容している現状こそが実は、世界の約170カ国が批准するFCTC(タバコ規制枠組み条約)に完全に違反している。ちなみに国際「条約」は、今議論中のTPPという国際「協定」より上位の約束ごとである。何はともあれ、日本は受動喫煙規制に関して世界最低レベルかつ国際条約違反であることをまずは医療者自身が知ることが重要である。蛇足だが、リビングウイルの法的担保がないのも先進国の中で日本だけ。なぜか日本の医学・看護教育ではこうした国際常識を教えない。己を知ることから、すべては始まる。

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