脳実質内腫瘍の神経膠腫においては,摘出率が予後と強く相関するため,可能な限り多くの病変を摘出することが重要である。しかし,術中の術者の感覚のみでは,摘出率の正確な把握は困難である。その対策として,リアルタイムに位置情報を明示できるナビゲーション技術が普及しているが,術中の脳の動きにより,術前に施行したMRI位置情報とのずれが生じ,正確性には限界があった。
この問題を解決するため,手術中にナビゲーション情報の更新ができる術中MRIが開発され,わが国においても普及してきている1)。術中MRIの使用は,神経膠腫の摘出率を正確に評価し,さらに,追加摘出により摘出度が向上し,生命予後や生活の質の改善に寄与することが報告されている2)3)。
最近では,3テスラの高磁場MRIの導入も行われ,解像度とコントラストが大幅に改善している。3テスラ高磁場MRIは,様々なシークエンスに対応でき,中でも高解像度の拡散テンソル画像によるfiber trackingは,錐体路,弓状束,視放線などの白質線維を可視化できるため,機能予後の改善に大きな役割を果たすことが期待される。
このように,神経膠腫において高解像度術中MRIを使用することで繊細な術中情報が得られるため,1回の手術で最大限の摘出と機能の温存が達成できるようになった。
【文献】
1) 日本術中画像情報学会:術中MRIガイドライン. 2014.
2) Senft C, et al:Lancet Oncol. 2011;12(11):997-1003.
3) Kubben PL, et al:Lancet Oncol. 2011;12(11): 1062-70.
【解説】
1)川瀧智之,2)木内博之 山梨大学脳神経外科 1)准教授 2)教授