産業医に求められる役割や職務の見直しについて議論してきた厚生労働省の「産業医制度の在り方に関する検討会」が26日、検討結果を取りまとめた報告書を公表した。長時間労働者(用語解説)に関する情報を定期的に産業医に提供することを、事業者に義務化するよう提言している。
報告書では、産業医が月1回以上行うこととされている職場巡視について、作業環境等の問題点を把握するだけでなく、就業上の措置のフォローアップや事業者・労働者との関係づくりの面でも「有益」と指摘。一方で、過重労働対策やメンタルヘルス対策の重要性の高まりや、嘱託産業医を中心により効率的な職務の実施が求められていることを踏まえ、産業医の情報収集の手段として「職場巡視とそれ以外の手段を組み合わせることも有効」としている。
その上で、事業者から産業医に対し、①長時間労働者に対する面接指導の基準に該当する労働者とその労働時間数、②週1回以上の衛生管理者の職場巡視の結果―などの情報が、月1回以上提供される場合には、事業者の同意を条件に、産業医の職場巡視の頻度を現行の「毎月1回以上」から「2月以内ごとに1回以上」へ変更可能とするよう提言している。
職場巡視の頻度を変更しない事業者に対しても、過重労働対策を進める観点から、長時間労働者に関する情報を月1回以上、産業医に提供することを義務づける必要があるとしている。
用語解説▶長時間労働者
労働安全衛生法において事業者が月1回以上把握することとされている、過重労働面接の基準に該当する労働者。その基準は、週40時間(休憩時間を除く)を超える労働が1カ月当たり100時間以上、かつ疲労の蓄積が認められる者。