【質問者】
武井 卓 東京都健康長寿医療センター腎臓内科部長
(1)異常IgA分子をバイオマーカーとして 臨床応用
IgA腎症は,世界で最も多い原発性糸球体腎炎です。予後不良で,2015年にわが国では指定難病のひとつになりました。最初の報告から50年が経ちますが,いまだ病因は不明です。しかし近年,IgA腎症患者のIgA分子の異常,特にIgA1分子のヒンジ部のガラクトースによる糖鎖修飾が減少・消失(galactose-deficient IgA1:Gd-IgA1)していることがわかりました。さらに,Gd-IgA1を認識する自己抗体(anti-glycan IgG/IgA)も増加し,それによる免疫複合体(Gd-IgA1-IC)形成も病態に関わることも判明しました。
患者血清中ではGd-IgA1,anti-glycan IgG/Ig A,Gd-IgA1-ICが上昇し,その程度がIgA腎症の腎予後や疾患活動性と相関することがわかりました。腎糸球体に沈着するIgAの大部分が血清由来のGd-IgA1であることも明らかになり,これら病因に基づく分子をバイオマーカーとして診断・スクリーニングに用いる臨床応用が始まりました。
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