1997年,電気離脱式プラチナコイルの認可により脳動脈瘤の血管内治療が幕を開けた。以来20年間,コイル塞栓術による動脈瘤治療数が年々増加の一途をたどっている。また,デバイスの飛躍的な進歩に伴い適応も拡大し,初期には治療困難であったネックの広い動脈瘤も,安全・確実に治療されるようになっている。しかしながら,大型の動脈瘤ではいまだに高確率で再治療を要するなど,限界もある。
ところが,近年開発されたフローダイバーターステントは,メッシュ部分が細かく密で,かつ金属が接する血管内皮面積の割合が30%以上(通常のコイル塞栓用ステントでは約10%)と高いため,動脈瘤の入口を覆うように母血管に留置しただけで,動脈瘤内への血流を著しく減らし,血栓化を惹起して閉塞に至らしめることが可能である。その一方で,ステントが留置されても穿通動脈は温存されるという利点を有しており,このほど,限られた施設ではあるが臨床使用が可能となった。
適応となる動脈瘤は,海綿静脈洞部から頭蓋内近位部の内頚動脈瘤の大型のもので,従来ではクリッピングが困難で,内頚動脈閉塞術やバイパス術を併用して治療を行っていたものである。画期的な治療方法ではあるが,有効性については慎重に検討した上で適応を選択しなければならず,いずれの動脈瘤にも安全に使用できるところまでには至っていない。今後の知見の蓄積と改良により大きな成果がもたらされることが期待されている。
【解説】
1)金丸和也,2)木内博之 山梨大学脳神経外科 1)講師 2)教授