夜間頻尿の病態は夜間1回排尿量の減少または夜間尿量の増加に集約される
夜間1回排尿量の減少の原因として過活動膀胱(OAB),間質性膀胱炎,残尿量増加による排尿効率の低下が挙げられる
睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害,高血圧症,メタボリック症候群は夜間1回排尿量の減少と夜間多尿を惹起して夜間頻尿を発症させる
夜間頻尿は「夜間に排尿のため1回以上起きなければならないという訴え」であり1) 2) ,加齢とともに頻度が高くなり,生活の質(quality of life:QOL)を障害する。日本排尿機能学会が行った下部尿路症状に関する疫学調査では,種々の下部尿路症状の中で夜間頻尿は日常生活における支障度が男性で最も高く,女性では腹圧性尿失禁と同程度であった3)。また,高齢者では夜間頻尿が転倒による骨折のリスク因子であること,そして生存率を低下させることが報告されている4)。このように,高齢者のQOL低下の原因として夜間頻尿は重要である。
「夜間頻尿診療ガイドライン」では夜間頻尿の病因として,(全日)多尿・夜間多尿,膀胱蓄尿障害,睡眠障害が挙げられているが2),夜間排尿回数は夜間尿量と夜間1回排尿量で決定される。本稿では,夜間頻尿の病態として夜間就寝中の1回排尿量の減少と夜間就寝中の尿量の増加(全日多尿または夜間多尿),そして,これら2つの機序と関連する分類が困難なものにわけて概説する(表1)。
夜間1回排尿量が減少する原因は,膀胱蓄尿量の減少と,残尿量の増加によって排尿効率が低下する病態にわけられる。
膀胱蓄尿量の減少をきたす疾患として,過活動膀胱(overactive bladder syndrome:OAB),間質性膀胱炎が挙げられる2)。OABは尿意切迫感を必須とする症状症候群で,神経因性と非神経因性に分類される。神経因性の代表的な疾患としては脳梗塞などの脳血管障害,アルツハイマー病やパーキンソン病による神経因性膀胱が挙げられ,非神経因性の代表的な疾患としては中高年男性の下部尿路閉塞,中高年女性の骨盤底の脆弱化,加齢などが挙げられる。加齢に伴うOAB発症の機序は不明だが,脳内のアセチルコリンやドパミンの受容体数の減少が想定されている。間質性膀胱炎は膀胱粘膜の透過性亢進による炎症に伴って膀胱知覚が亢進する疾患である。典型的には蓄尿時膀胱痛を認めるが,疼痛を膀胱ではなく尿道などに感じる症例や疼痛が軽微な症例も認められる。難治性OABでは間質性膀胱炎を疑う必要がある。
残尿量増加に伴う排尿効率低下のため1回排尿量の減少をきたす主な疾患として,男性では前立腺肥大症,女性では骨盤臓器脱(膀胱瘤や子宮脱)が挙げられる。また,抗コリン薬によるOAB治療中に薬剤性に残尿が増加して夜間頻尿が増悪することがあり,日常臨床で注意が必要である。
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