厚生労働省の「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」による昨年末の議論の整理では、「がんと診断された時からの緩和ケア」の一層の推進に向け、がん以外の疾患や、がん診療連携拠点病院以外の医療機関での緩和ケア拡大が盛り込まれた。6月からは第3期がん対策推進基本計画が始まる予定だ。緩和ケアは今後どうなるのか。検討会構成員で日本緩和医療学会理事長の細川豊史氏に話を聞いた。
緩和ケアの目的は、がんに限らず主に命を脅かす疾患を持つ患者さんとそのご家族のQOLの向上です。ただ、日本では約10年間、がんを対象に緩和ケアが進められてきました。
一方、例えば在宅の看取りの現状では、がん患者さんは大体5~15%で、呼吸器や循環器疾患、神経難病、肺炎等の感染症など、多くはがん以外が原因で亡くなります。これを踏まえると遅きに失した感はありますが、がん以外の疾患にも緩和ケアを推進する方向性を厚労省検討会が示したのは素晴らしいことだと考えています。
緩和ケアの定義から言えば、疾患が異なっても本質的な考え方は同じです。ただ、治療やケア、亡くなる経過は異なるので、そこは各分野別の教育が求められます。
具体的には、2本立ての研修会が考えられます。現在、日本緩和医療学会、日本サイコオンコロジー学会は、がん診療に携わる医師を対象に「緩和ケア継続教育プログラム:PEACE(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education)」という研修会を実施しています。内容は、患者に対する姿勢やコミュニケーション、アドバンス・ケア・プランニング、EOL(End-of-Life)スキル、地域連携、看取りなどの総論が中心となっています。
緩和ケア研修の第1段階として、PEACEの受講対象をがん以外の疾患の緩和ケアに携わる医師にも広げ、共通する概念や知識の講義を行い、第2段階として、がん、循環器、呼吸器、神経難病、AIDSなどに分けた研修を行っていくことになると思います。テキストや研修内容については、関連学会の協働が開始されています。
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