地域医療に関わる多職種が一堂に会して研修を受ける「ごちゃまぜIPE」を考案し、十数年にわたり実践してきた。「国が地域包括ケアを推進する中で、総合診療医には地域の特性に応じて医療の内容をアレンジする力が求められていますが、それは医師1人ではできません。多職種が対等な立場で話し合い、協力しあえる環境が不可欠です」
ごちゃまぜIPEに思い至ったのは、岐阜県・揖斐川上流の山間にある医療センターに赴任していた時のこと。「若手のリハ職員に『学生時代、医学生と勉強したことはあるか』と訊くと『全くない』と言うんです。現実の訪問診療では一緒に医療を提供するのに、養成課程では互いの顔も見ずに分離されている。これはおかしいと思いました」
そこで吉村さんは医療センターへ実習に来る医学生や看護学生たちに呼び掛け、課外授業として事例検討会を設定。すると、それまでは挨拶さえしなかった学生たちが打ち解け、互いの領域の専門用語などについて活発に質問し合うように。学生の口コミで評判が広まり、大学の教員、ベテラン職員も参加しはじめ、職種の壁や医師をトップとする“階級意識”が徐々に取り払われていった。
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