SPRINT試験の結果は,家庭医における通常の診察室血圧を,150mmHgではなく,130〜140mmHgを目標に低下させることの有効性を示したものと思われる
5分以上の安静坐位後に,ガイドラインに沿った正確な診察室血圧測定や医師や看護師がいない状況下での診察室自動血圧測定が可能な施設においては,120mmHgを指標に血圧コントロールしてもよいと思われるが,SPRINT試験では糖尿病,老人ホーム入所者,脳卒中既往などの低血圧リスク患者が除外されていることに留意する必要がある
SPRINT試験において,積極的な降圧治療(収縮期血圧120mmHg)が,通常治療(収縮期血圧140mmHg)よりも主要エンドポイントを減少させることが報告された1)。SPRINT試験における診察室血圧は,自動血圧計(オムロン社製HEM-907®)を用いて,医師や看護師のいない状況で,血圧計内蔵のタイマーを用いて5分間安静にした後に,1分間隔で3回測定されている(unattended automatic office blood pressure:unattended AOBP)。これは,既存の高血圧治療ガイドラインに沿った診察室血圧測定法に基づいているが,多忙な日常臨床においてこのような測定条件を完全に遵守することは困難な場合が多い。
本稿では,このunattended AOBPが,医師による通常の水銀血圧計での診察室血圧におけるどのレベルに相当するのかを推察する。
我々が知る限り,unattended AOBPが測定可能な診察室血圧計は,①HEM-907®(オムロン社,日本),②BpTRUTM(BpTRU社,カナダ),そして③WatchBP® Office(Microlife社,台湾),の3機種が報告されている。HEM-907®は,血圧測定開始までの時間をタイマーで設定し,測定回数と測定間隔を設定することが可能である。
SPRINT試験では,診察室で医師が血圧測定開始ボタンを押したのちに退出し,5分後に1分間隔で3回測定を行っている。BpTRUTMは血圧測定開始までの時間設定はできないが,ボタンを押した後,一定間隔で5回の連続測定が可能である。1回目の試験測定後に医師が診察室を退出して,医師不在の状況で繰り返し診察室血圧が測定される。WatchBP® Officeは医師や看護師がいない診察室において,Bluetoothシステムを用いて血圧計の起動が可能であり,一定時間安静にした後に遠隔操作で血圧測定を開始し,一定間隔で3回の診察室血圧が測定可能である。
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