前立腺癌は現在,日本人男性で最も罹患率,死亡率が上昇している癌である。近い将来,肺癌についで男性に2番目に多い癌になると推定されている。前立腺癌治療は,排尿・性機能など男性の尊厳に関与する機能に影響を与える可能性がある。21世紀を生きる男性にとって前立腺癌は大きな脅威である。
前立腺癌の治療は,この数年で大きな変化を遂げようとしている。局所癌では,すでに海外で安全性・根治性,そして排尿機能・性機能の温存に対して高い評価を得てきたロボット手術が,わが国においても定着した。さらに局在診断が進歩すれば,癌病巣のみを標的とした局所治療(focal therapy)も近未来の実用化が期待されている。また,従来治療法のなかった転移性内分泌不応前立腺癌(去勢抵抗性前立腺癌)にも新しい治療薬が開発されて,予後が改善しつつある。
前立腺癌治療は新時代に入りつつある。本特集では,ロボット手術,focal therapy, 新しい薬物治療について解説した。さらに,何にもまして前立腺癌の予防リテラシーの啓発が必要であることを強調したい。
1 ロボット手術da Vinciが拓いた新しい治療可能性
順天堂大学大学院泌尿器外科学・順天堂医院泌尿器科教授 堀江重郎
2 去勢抵抗性前立腺癌に対する薬物療法の新しい展開
群馬大学大学院医学系研究科泌尿器科学教授 鈴木和浩
3 治療のパラダイムシフト:局所標的治療
帝京大学医学部泌尿器科准教授 武藤 智