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(3)期待が集まる老健での最期 [特集:看取りのいま─多死社会の「自分らしい最期」を支える]

No.4728 (2014年12月06日発行) P.19

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

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期待が集まる老健での最期

多死社会の到来により、看取りの場の一つとして期待されるのが老健だ。

厚労省が10月に公表した、介護施設での医療・看護提供に関する調査の速報値によると(図)、個別に計画を立てた上で看取りを行う老健は51.4%。計画を立てずに看取りを行っている施設と合わせると、計61.8%が看取りを実施している。

一方、「看取りは行っておらず、今後も対応予定はない」との回答は17.3%。「条件が整えば対応を考えたい」とした施設も19.0%あった。

老健での看取りが介護報酬上初めて評価されたのは2008年。前回の2012年度改定では看取りの加算により細かく手厚い評価がついた。全国老人保健施設協会会長の東憲太郎さんは「老健は医療と介護がバランス良く提供できる」と強調する。

全老健がガイドライン

看取りの現場で大きなポイントとなるのが本人・家族へのインフォームドコンセント。全老健は2012年、意思表示のあり方など施設内の体制作りの指針を示す「介護老人保健施設における看取りのガイドライン」(GL)を公表した。

GLは、看取り場所の選択や終末期に受けるケアの内容、施設の医療・看護体制について、管理医師が本人や家族に十分説明する必要があることを明記。本人意思を記録する書類の例示では、「終末期を迎える場所」「心肺蘇生」「人工呼吸」「胃ろう」「経鼻栄養」などについて、希望を記載する欄を設けている。

本人の意思が確認できない場合は、管理者の下に設置する「終末期ケア委員会」で家族の推定する本人意思を尊重し、最善の看取りを行うとした。

日本老年医学会が今年始めた老健医師に対する研修には、こうした看取りに関する説明責任や医師法20条の解釈も、管理医師に求められる知識として盛り込まれている。

介護職への教育が不可欠

介護施設にとって、看取りの課題となるのが介護職への教育だ。前述の調査では看取りに関する課題も尋ねており、上位には「研修等を通じた知識・技術の習得が不足」「職員の精神的負担が増す」などが並ぶ。東氏も「臨死教育を受ける看護師と異なり、介護職にはそのような教育が十分になされていないのが現状です」と教育の重要性を指摘する。

このほか、夜間の体制など人員体制の問題や、尊厳ある看取りを行うための個室がないなど設備の問題をあげる回答も目立つ。老健での最期を希望する高齢者に応えるためには、施設の方針だけではなく、研修制度の充実や勤務体制の改善、ハード面の整備も欠かせないだろう。





全老健会長 東 憲太郎 さん

ガイドライン作成にも携わった東さん。「日本独特の『老衰』という概念の定義に苦労しました」。老健は在宅復帰を支援する施設と位置づけられるが、在宅復帰率が高い施設は看取りに対する加算の算定率も高く、「看取りも在宅支援の一つ」

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