FT(focal therapy)は前立腺内の臨床的に有意なすべての癌病巣を非侵襲的方法により治療することである
FTは過剰治療を防ぐ可能性がある
局在診断など,FTには解決すべき課題も多い
前立腺癌は先進国において頻度の高い悪性腫瘍であり,わが国でも最近増加傾向にある。低リスク限局性前立腺癌に対する根治療法の標準治療は根治的前立腺摘除術であるが,重篤な合併症を確実に避けることは難しく1),最低期待生命予後が10年未満の症例に対する適応は慎重にならざるをえない。
最近の医療技術の進歩は目覚ましく,癌に対する手術は開放手術のみならず,より低侵襲な手術も可能となりつつある。わが国では,ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(robot-assisted laparoscopic radical prostatectomy:RARP)が保険収載されて以後,症例数が爆発的に増加し,手術ロボットの保有台数は,あっという間に米国についで世界第2位となった。RARPは既に標準術式と言っても過言ではなく,開放手術よりも低侵襲であることが大きな特徴であることは言うまでもない。しかし,わが国では一部の狭い地域の多数の施設にRARPが導入されたため,低リスク症例に対する明らかな過剰治療が行われていないかが危惧される。一方,無治療経過観察は,適応基準や治療進行のモニター,治療開始の時期が明確でない2)。
最近,従来とは異なる治療法としてFT(focal therapy)が注目されている。FTは“targeted ablation of a limited area of the prostate expected to contain the dominant or only focus of cancer”と定義され,前立腺内の臨床的に有意なすべての癌病巣を非侵襲的な方法で治療することであり3) ,前立腺全体への治療が前立腺癌に対する唯一の治療であるという従来の考え方とはまったく異なる。
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