現在,約15%のカップルが不妊に悩んでいるとされる中で,男性側のみに原因があるものと男女ともに原因があるものを合わせると,その割合は約半数にもなると言われる。不妊の約半数は男性側にも問題があるということであり,いまや男性不妊は決してめずらしいものではない。
近年の生殖補助医療技術の進歩は著しく,現在では極少量の精子しかいない男性不妊患者でも顕微授精によって挙児が望める時代となっている。しかしながら,男性因子の検索がされないまま体外受精や顕微授精といった生殖補助医療技術が先行され,治療可能な病態が見過ごされているのも事実である。
晩婚化に伴い,男性不妊診療はますます必要になることが予想される。そこで本特集では,男性不妊診療の「光」の部分のみならず「影」の部分についても解説し,泌尿器科ではない他科の先生が遭遇するような疾患と男性不妊の関係についても概説する。本特集が,普段,男性不妊診療に携わることのない先生方にとっての知識獲得の場となり,少しでも役に立つことを願ってやまない。
1 男性不妊の原因と治療の現状
横浜市立大学附属市民総合医療センター生殖医療センター部長 湯村 寧
2 医療経済的問題および次世代への問題点
山口大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野講師 白石晃司
3 他科疾患と男性不妊
獨協医科大学越谷病院泌尿器科/リプロダクションセンター 慎 武
獨協医科大学越谷病院リプロダクションセンター 田中貴士
獨協医科大学越谷病院泌尿器科主任教授/リプロダクションセンターセンター長 岡田 弘