(山口県 H)
「高齢者の日光浴の功罪」の中で最も問題となるのは,「(高齢者における)紫外線による健康への有効性と有害性」と思われます。紫外線(ultraviolet:UV)は,特に日常生活上人体への影響のあるものとしてUV-A,UV-B,UV-Cが知られています。UV-Aは皮膚真皮層に作用して弾性喪失などの組織変性をもたらし,しわ,たるみなどのいわゆる皮膚老化をもたらします(サンタン)。またUV-Bは表皮基底にある色素細胞に作用し,メラニンの生成を促すとともにビタミンDの生成作用もある一方,皮膚細胞のDNAを障害(特に幼少期)する可能性も知られています(サンバーン)。さらにUV-Cには強い殺菌作用等が知られています。これら複合された紫外線による健康への悪影響は,以下のようにまとめることができます。
①急性に生じる障害:日焼け(サンバーン),紫外線性角膜障害(雪目),大量曝露による免疫機能低下など
②慢性に生じる障害:光老化(菱形皮膚,日光黒子),脂漏性角化症(良性腫瘍),前癌症および皮膚癌(悪性黒色腫,有棘細胞癌),白内障,翼状片など
一方,日光浴あるいは適切な紫外線を浴びることによる最大の健康効果としてビタミンD生成が挙げられます。すなわち紫外線(UV-B)は皮下に存在するコレステロール(7-dehydrocholesterol)からビタミンD3(コレカルシフェロール,C27H44O)を生合成させる重要な作用があります。さらに,最近行われた多くの研究から,このビタミンDに関しては,単に骨への作用のみならず,転倒予防をはじめとして高齢期の健康全体に効果をもたらしていることが,明らかになってきました1)2)。
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