No.4850 (2017年04月08日発行) P.18
長尾和宏 (長尾クリニック)
登録日: 2017-04-07
最終更新日: 2017-04-05
去る3月21〜23日、第12回ユネスコ生命倫理世界会議に参加した。昨年10月、ユネスコ生命倫理学講座日本支部が開催した「世界生命倫理デー」記念セレモニーで講演させていただいたご縁である。5年ぶりに欧州の旅をさせていただいた。キプロスはトルコの南、レバノンの西に位置する四国の半分くらいの面積の島だ。会議には世界各国から約500名の生命倫理関係者が集まり、生命倫理だけでなく医療倫理や関連法などについて3日間にわたり熱い議論が交わされた。日本からは数名の参加であったが、同じアジアからは中国や台湾、インドからの参加が目立った。そして一度アジアで支部会をやろうか、と盛り上がった。
会議では、生命倫理に関する医学教育のあり方が大きな話題となった。そういえば先日、ある研究会で「ヒポクラテスの誓いを知っているか?」という質問に手を挙げた医師は半分しかいなかった。私自身は医学部1年生の時にちょっと怖そうな風貌の哲学の先生に教えていただいた記憶が今でも残っている。しかしそれを知らずに指導的立場にいる医師が少なくないことに愕然とした。昨今、大学病院などを舞台に、医の倫理の観点から明らかに逸脱した事件が報じられているが、こうした背景が関与しているのだろうか。日本では、2018年度入学の医学生から医学教育のモデルコアカリキュラムが大きく変わる。文部科学省は、医の倫理や在宅医療、終末期医療など医師としての基本的な知識を医学部の低学年から教えることを決定した。これは、ユネスコの生命倫理の教育向上のための活動とも大きく関係している。しかし、日本では指導者層が貧弱であり、その養成が急務である。
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