わが国では1997年に臓器移植法が施行され,脳死臓器移植が可能となった。心臓移植は99年2月に第1例目が施行されたが,脳死ドナーの基準が限定的であったために,2010年の臓器移植法改正までは年間10例以下しか実施されず,小児の心臓移植は事実上国内では不可能であった。
法律改正後は脳死ドナーの数が増加し,心臓移植数は15年に年間44例に達した。16年10月末までの実施数は307例である1)。18歳未満の小児の心臓移植は19例となった。しかし,10歳未満に限定すると4例しか施行されていない。移植手技では,わが国のKitamuraが発表したmodified bicaval法2)が90%以上で施行されている。
11年4月に,植込み型補助人工心臓が心臓移植への橋渡しの目的で保険適用を受けた。これを契機として登録患者が急速に増え,16年10月末現在で537人が登録されている。植込み型補助人工心臓による長期補助の効果は著しく,15年の44例の心臓移植の待機期間は1000日を超えた。
15年12月までの266例の移植後生存率は,1年,5年,10年で97%,93%,92%であり,欧米の86%,73%,56%よりはるかに優れている。新たな免疫抑制薬としてmTOR阻害薬であるエベロリムスが導入され,カルシニューリン阻害薬による腎機能低下,難治性サイトメガロウイルス感染,移植心冠動脈病変などに有効であることが経験されており,長期成績の改善に寄与している。
【文献】
1) Nakatani T, et al:Circ J. 2016;80(1):44-50.
2) Kitamura S, et al:Ann Thorac Surg. 2001;72(4): 1405-6.
【解説】
小野 稔 東京大学心臓外科教授